どうも、著者です。
今回はギリシャ神話一のブサイクと言われるヘパイストスを紹介します。
美男美女揃いのギリシャ神話でもブサイク神といわれるヘパイストスは超波乱万丈な神?
では、どうぞ!
鍛冶の神ヘパイストスはギリシャ神話界一のブサイク?
ヘパイストスはある程度自業自得な面もあるとはいえ、ギリシャ神話界一のブサイクとして波乱万丈な人生を送ってきました。
そもそも、ギリシャ神話に登場する神々はみな眉目秀麗。
性に奔放すぎるという難点はありますが、それでも絶世の美男美女揃いでした。
しかし、その中においてヘパイストスは奇形と言われるほどに醜い容姿。
彼の母親である婚姻の神ヘラ(父は至高神ゼウス)は、例に漏れず眉目秀麗な女神であり、プライドの高い神でしたから、当然のことながらヘパイストスを忌み嫌います。
そこでヘラは現代の国際的問題といわれているネグレクト(育児放棄)などとは比べ物にならない非道な所業をヘパイストスに課します。
彼女は生まれたばかりのヘパイストスを海に捨てたのです。
このような逸話は世界各地にあり、わが国日本でも、イザナギノミコト、イザナミノミコトの間に生まれた蛭子がこのような憂き目に合っています。
そんなヘパイストスとヘラの関係は、大変にこじれたものであったと考えられます。
神々を我々の尺度で考えてはならない、というような見方ももちろんありますが、このように育児放棄された母子というような間柄でありながら、彼ら親子は、互いのターニングポイントにおいて、何度も運命を交えることになります。
ヘパイストスの嫁は美の女神アフロディーテ?
そんなブサイクとして知られたヘパイストスですが、意外なことに奥さんは、ギリシャ神話一の美女神であるアフロディーテとされています。
しかしながら、この結婚にも母親のヘラが大きく関わってきます。
ヘパイストスは実の子でありながら、自らを捨てたヘラに対する鬱憤を日々ためていました。
そんなある日、遂に彼は行動を起こします。
実の親であるヘラに対して、ヘパイストスは、それは豪奢なイスを贈ります。
このイスは黄金でできており、宝石の散りばめられた、大層美しいものであったそうです。
この贈り物にたいして、母親としての情もあったのか、それとも単純に神界でも名工と謳われるヘパイストスの作った美しい芸術品であったからなのか。
ともかく、ヘラは喜んで、この贈り物を受け取り、さっそく腰かけます。
しかしながら、このイスにはある仕掛けがありました。
それは、座った瞬間に、透明な帯が対象を拘束するというトラップ。
まんまとこの罠にかかって身動きの取れなくなったヘラに対して、ヘパイストスはある要求をします。
「私を認知してください。私があなたの子であると、ここで認めてください」
ヘラは醜いヘパイストスを認知したくなどありませんでしたが、このままイスに縛り付けられているわけにはいかない、と考えました。
前述のとおり、プライドの高かったヘラは、そのような屈辱に耐えることはできなかったのです。
仕方なく、ヘパイストスは自らの子である、とヘラは認めたわけです。
しかし、長年培ってきた母に対する疑念は、この程度では払拭できなかったのです。
ヘパイストスは次に、このように言いました。
「ならば、神界一の美女と謳われるアフロディーテを私の嫁にしてください。できないのならば、私はあなたの発言を認めません」
このような発言の真意は分かりません。
母の化けの皮をはがしたかっただけなのか、それとも、母が自分を愛しているという確たる証が欲しかったのか。
対して、拘束の恥に耐えきれなくなったヘラは、これも了承。
至高神ゼウスの嫁であるヘラを助けるために、神々は急いでアフロディーテのもとに向かいました。
神界一の美女神であり、性に奔放、かつ面食いでもあったアフロディーテは、最初、これを拒否します。
「なんで私がヘパイストスなんかと結婚しなきゃいけないのよ!」
しかし、神々がヘラの置かれている状況を話すと。
「ヘラ様が……仕方ないわね」
と、流石に奔放な女神であっても、至高神の妻であるヘラをそのまま、イスに縛り付けておくわけにもいかなかったので、これを了承します。
ギリシャ神話界一の格差夫婦であり、ギリシャ神話界一愛のない夫婦が誕生しました。
アフロディーテとの結婚、そして浮気
そんな半ば脅しじみた、愛のない結婚だったため、もちろん、夫婦間に愛情はありませんでした。
ヘパイストスがアフロディーテを抱き寄せようとすれば、彼女は必至に抵抗する。
夫婦とは名ばかりの、ただの同居人。
現代の仮面夫婦のようなものですね。
とにかく、そのような生活が続いていく中で、ついにアフロディーテの浮気がヘパイストスに露見する日がきました。
これ以前にもしていたのかもしれませんが、この軍神アレスとの浮気に関しては、ヘパイストスが完全に気づいてしまったのです。
ちなみに、この軍神アレス。
彼もヘラとゼウスの間に生まれた子供ですので、ヘパイストスとは兄弟ということになります。
神々の間でも粗暴で嫌われ者であった兄弟のアレスに妻を奪われたヘパイストスの心情を考えると、涙を禁じえませんね。
アレスはかなりの美男であったそうなので、アフロディーテはそこに惹かれたのでしょう。
実は、ヘパイストスはこの浮気の事実に気付いていたのです。
しかし、確たる証拠のなかった彼は一計を案じます。
ヘパイストスは「しばらく仕事に行くから戻らない。留守は頼んだ」
とアフロディーテに伝えます。
これ幸いとアレスと逢瀬を楽しもうとしたアフロディーテですが、2人がベッドに入ろうとしたとき、ヘパイストスの仕掛けたトラップが発動しました。
透明な、見えない糸によって拘束されたアフロディーテとアレス。
激昂したヘパイストスは他の神々も招き入れ、2人の痴態を見せつけました。
恥ずかしい姿をさらしてしまった2人は、叔父のポセイドンの仲裁で、ようやく解放されますが、周りの神々は2人を見て笑うばかり。
ここで一番恥をかいたのは、やはり結婚を仲介した母ヘラです。
ヘパイストスは「母さん!仲介してくれてありがとう!でも、こんな浮気するような女は必要ないから、謹んでお返しします!」と言ってのけたのです。
ヘラは他の神々が笑うなか、アフロディーテを連れてスゴスゴと帰っていったそうです。
このあと、ヘパイストスとアフロディーテは、またもやポセイドンの仲介により、離婚します。
アレスとアフロディーテは離島でしばらくの謹慎を受けますが、アフロディーテはこの離婚を心底喜んでいたようで、離婚の仲介をしたポセイドンに対してお礼をしています。
ヘパイストスは最初は拒否しましたが、ポセイドンによって半ば強制的にアレスからの賠償金を渡され、これで修羅場は終わります。